暗愚楽月報
The Underground Disc Review
第64号

濡れ落ち葉
なるのも構わずCD漁り
秋らめませんよ閉店までは
秋れた友達みな先帰る

Editer's Note

今月の金賞(D'OR)


★★★★★
Maurice Duruflé "Requiem, op.9 / Quatre Motets, op.10 / Missa Cum Jubilo, op.11" (BIS : CD-300602)
Gary Graden (cond) Paula Hoffman (msp) Mattias Wagner (org) Peter Mattei (btn) Ekemér Lavotha (vc) St. Jacob's Chamber Choir
安く見かけると欲しくなるデュリュフレの『レクイエム』。こちらはストックホルムにある聖ヤコブス教会で,1980年に結団された聖歌隊によって制作された録音。恥ずかしながら合唱団は初耳で,購入には多少の勇気を必要としましたが,蓋を開けてみますと,その筋では滅法有名なエリック・エリクソンが初代の合唱団長。由緒ある聖歌隊でした。1984年にその地位を譲られたのが,本盤で合唱指揮を執るグラッデンさん。彼は当時,まだ王立音楽アカデミーでエリクソンから指揮法を学んでいる最中だったわけで,よほど才能を見込まれていたんでしょう。果たして数年のうちに,このコンビは世界的にも大成功。1992年のゴリツィア国際,1991,1993年のトロサ国際コンクールでグランプリを受賞するなど,絶頂期を迎えます。本盤はちょうど,その黄金期の真っ只中だった1992年の吹き込み。上手くすれば静謐で荘厳なミサの空気があらわれる反面,誤魔化しが利かないぶん,歌唱がヒドイと目も当てられない第三版(オルガン伴奏版)を,自信満々レクイエムで採用するのも伊達じゃありません。とにかくソリストも聖歌隊も怖ろしくハイレベルで仰天。精密機械の如く正確で,ビロードよりもきめ細やかです。これはもう紛う方なき大名盤でしょう。当方,合唱界には明るくないので釈然としないのですが,聖ミカエリ室内合唱団とかいう謎聖歌隊の作ったマルタンもびっくりするほど良かったですし,スウェーデンの聖歌隊って何だかレベル高いですねえ。エリクソンさんのお陰ですか?






Recommends


Gabriel Pierné "L'an Mil / Les Cathédrales / Paysages Franciscains" (Timpani : 1C1117)
Jacques Mercier (cond) Lionel Peintre (btn) Choeur Nicolas de Grigny : Orchestre National de Lorraine
ロパルツの救済があらかた終了したタンパニさんは,ピエルネの制覇に邁進中。ぱっとしない録音でばかり録られていたピエルネの管弦楽曲は,言われてみれば極端に品薄でした。本盤はその真打ちというべきもので,ジャケット最悪なくせに中身は見事だったBIS録音が記憶に残る国立ロレーヌ管弦楽団(旧ロレーヌ・フィル)が演奏。随分前に,かのピエール・デルヴォーがロワール管の垢抜けのしない弦を利して吹き込んだきりだった『寺院』と『フランチェスコの情景』が入った本盤は,後期ピエルネの美味しいところを愉しめる願ったり叶ったりの録音。『寺院』はロワール管も録音してましたが,こちらが初録音と銘記されたのは,合唱団付帯の原典版を使っているからでしょう。ロレーヌ管の弦部は,かのデルヴォー盤なんぞ足下に及ばぬほど肌理が揃い,清らかに原曲の輪郭をかたどっていきます。好いことずくめの本盤に残念なことがあるとすれば,細部に僅かな粗さが残るオケと,指揮棒を振るメルシエさんの,ややリズムの輪郭を強調しすぎるきらいのある指揮ぶりでしょうか。恐らくピエルネの生涯で最も幸福にドビュッシーと一体になれたであろう『フランチェスコ』はその好個の例。「聖女クレールの庭」,「秋の黄昏」を演奏最悪なデルヴォーと比べるにつけ,リズムを整理しようとするあまり,少なからず足取りが硬く抑揚の乏しいものになる結果を招いているのが惜しいです。併録の交響詩『千年紀』も,歌劇的なお高貴さ漂う筆致で良く書けているものの,ワグネリスト的大仰さと初期ロパルツ風の旧式和声の歌劇風。ドビュッシー以降のお好きな方には辛めかも。・・まあ,それでも併録の二品がウハウハですから。和声フェチな貴方でも充分愉しめるんじゃないでしょうか。★★★★☆
Ervin Schulhoff "Symphony No.1 / Symphony No.2 / Symphony No.3" (CPO : 999 251-2)
George Alexander Albrecht (cond) Philharmonia Hungarica
これはイイ!チェコのユダヤ人として,ナチの軍政に翻弄された悲運の作曲家シュールホフ。彼が書き残した6曲の交響曲中,最初の三曲を併録した録音です。自身ピアニストであったため,六人組を彷彿させるピアノ曲のほうが有名な彼。しかし,オネゲルやアイスラーの堅牢な形式とストラヴィンスキーの野趣溢れる蠢動を見事にバランスした彼の管弦楽は,濃厚な和声の背脂を入れてこそ光ります。特に『交響曲第1番』は絶品。ジョン・ウィリアムスばりの芳醇和声が,『パシフィック231』をも蹴散らす強力な新古典的蠢動のうえでぎらぎらテカってもう最高。シュールホフさんは管弦楽は滅法いけてますねえ。参りました。これで演奏がもう少し優秀なら文句なしに5つ星だったんですが・・。残念ながらオケはもう一声でした。廉価盤で時折名前の出てくるご存じフィルハーモニア・フンガリカ。アーティキュレーションは不揃いで,細部に神経の行き届くオケではありようがございません。シュールホフの交響曲には,ウラディーミル・ヴァーレクがプラハ響を率いて作った録音もあるみたいですから,手に入るならそっちで聴いた方がいいかも知れません。しかし本盤,指揮棒を執ったアルブレヒト氏が頑張った。力不足のオケに鞭を振るい,聴ける水準までに仕立てた努力のタクト。メリハリ良くきびきびと相貌を掴み取り,大きめのデュナーミクを利して豊かな抑揚と推進力を生みだしていくその手管は非凡で,技術的なアラをかなりの程度相殺することに成功している。100%満足とはいかないまでも,この曲の魅力を知るのに最低限必要なレベルは,充分超えた演奏になっているんじゃないでしょうか。★★★★☆
Déodat De Séverac "Cortège Catalan / Nymphes au Crépuscule / Recuedos / Pippermint Get / Le Mirage / Sérénade au Clair de Lune / Yvon Bourrel: Suite d'Après 'Le Roi Pinard' de Séverac" (Cascavelle : RSR 6197)
Roberto Benzi (cond) Jaël Azzaretti (sop) Orchestre de la Suisse Romande
バルビエのアコール盤がCD化されたのを機に,少しずつ認知度を高めつつあった南仏のリージョナリスト,セヴラック。その後ルルーの歌曲集やオルガン曲も出ましたが,なぜか管弦楽だけは出たのを見たことがありませんでした。1937年マルセイユでイタリア移民の子として生まれながら,クリュイタンスに見出された叩き上げの指揮者は,1973年にアキテーヌ管を立ち上げ,ついにはレジオン・ドヌール騎士章を受賞。そんな彼が,南仏の土の香りをたっぷり含んだセヴラックを,世界に先駆けてCDにするというのは,企画としてもよく考えられたものと申せましょう。ロマンド管が,かつてはスイス最高のオケだったことに異論を挟む人はないかと思いますけれど,ここ二十年来は出来にかなりばらつきがあるようで。本盤も細部はやや粗っぽく,「ひょっとして二軍?」との疑念を禁じ得ないのも確か。音色もざらりとして,少々垢抜けしないようです(これが意図的なら逆の意味で凄いですけど)。しかし,彼のイタリア魂に,ナポリ民謡を思わせる曲想が実に良く合っている。ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」に出てくる「サンライズ・サンセット」を思わせる『想い出』や,ウインナ・ワルツが村祭り風に変わってしまう『ピペルマン=ジェー』辺りは,指揮者の持ち味と開けっぴろげな原曲が好ましく噛み合って相乗効果をあげ,実にいい雰囲気です。もちろん,私を含むドビュッシストには,『海』や『夜想曲』の影響が,ファリャの薬味つきでこの上なく重度に示された『黄昏の妖精』やジョンゲン辺りが書きそうな愛らしい『月の光』,ロパルツ風味の歌曲『幻影』をちゃんと配膳。屈託のない叙情性が溢れ,充分幸せになれます。★★★★☆
Florent Schmitt "Pièces Romantiques / Enfants / Crépuscules / Petites Musiques / Chaîne Brisée" (Solstice : FYCD 920)
Alain Raës (piano)
ついに来ました!Solsticeがかつて発売していたシュミットのピアノ作品集,めでたく再発です。あのエグいジャケットも,素敵なシュミちゃん顔に差し替わってめでたしめでたし。初耳の『壊れた鎖』を目玉に,ご覧の通り大半の曲が中期以降の作。手薄なところにきっちり孫の手を伸ばす。名品『幻影』や『翳り』を彷彿させる神秘主義的な書法が存分に楽しめ,二度美味しい選曲に快哉。こんな録音を,まだCDもロクに普及していなかった1985年の時点でしていたなんて,やっぱり凄いぞSolstice。早速こちとらも皿回し芸人と化したのは申すまでもございません。一聴,録音は決して芳しくなく,どこぞの田舎の公会堂で残響をエコー代わりにして録ったとしか思えぬモノラリッシュな集音は,録音技師の品性を疑いたくなる仕上がり。1985年の発表当時,評価の面ではヒンソな録音でかなり損をしたんじゃないかと思いますけど,ピアノは不釣り合いにバカ上手い!と思ったら弾いてるのは無名なのに信頼できる珍しいお方,アラン・ラエズさんぢゃないですかお久しぶり!挨拶代わりに早速拝聴。少し重い気はするものの無意味に崩しすぎない情感表現と,装飾音のコロコロした粒立ちはさすが。こんなに上手いのに何で無名なんだろ〜?。そう思って今回,ついでに調べてみてとんでもない事実が発覚。この人・・パリ音楽院卒で,室内楽科とピアノ科で一等賞。おまけにジュネーヴ国際優勝者でした。今まで無名なんて言ってごめんなさ〜いっ(恥)。でも君も悪いんだよ?だって録音ぜ〜んぜん無いんだもん。やっぱ演奏家たるもの,国際的な知名度が欲しけりゃ録音してナンボですな!と無知を棚に上げて責任転嫁。★★★★☆
Franz Liszt "Mephisto Waltz No.1 / Les Jeux d'Eau à la Villa d'Este / Il Penseroso / Hungarian Rhapsody No.15 / Piano Sonata in B Minor" (Melodiya : MCD 172)
Milhail Pletnev (piano)
水の戯れ』で引き合いに出しながら,真面目に買ったことなんぞただの一度もないリストさん。神様皆様ごめんなさいという感じです。きっと円天会長も今,同じ気分でいらっしゃると思います。以前,掲示板で某Mさんから,「晩年のは聴けるよ」などとお薦めいただいて以来,いずれは聴いてみなきゃなと思っていたところで目に留まったのが本盤。兄貴がショパン好きでなかったら名前も知らなかったであろうロシアン・スクールの大巨人プレトニョフさんが若かりし頃の,ほとんど痙攣してるとしか思えない超光速運指で,くだんの『エステ荘の噴水,の戯れ』が聴けるというだけの安直な購入動機にポリしぃなんぞ在ろう筈もなく。散々ドイツもんは嫌いとかワグナー以前ばっか礼讃しやがってドイツもこいつも権威追従だとか言っていながら,その中のほとんど全部を毛嫌いしてまるきり聴かないちゅうのも逆の意味で問題大ありだと思われる今日この頃,あっしがリストについてこの上,数多ネット上のご高説を差し置いて口に出来ることなんぞ残されていようはずもございません。ナルシスティックかつ執拗なまでの豪胆ブロック・コードと装飾音がパガニニみたいな作曲者,それをまた怖ろしく明晰かつ軽やかに再現前していくミハイルヒトラー氏。二人の孤高のテク自慢が時を超えて繰り広げる,プライドを掛けた腕比べに,K-1でも見ているような気分になったとだけ申し上げ,老兵は死せず唯去り往くのみ。しかし,エステはなるほど,壮麗な装飾音がマッサージするエステティシャンの御手にも似た精妙かつ魅惑的な手管があり,ラヴェルがこの曲を範にしたとの臆断が流布したのも頷けたことのみ,ご報告させていただきたいと存じまする。★★★★
Erwin Schulhoff "Streichquartett G-Dur / Sonate für Violine Solo / Duo für Violine und Violoncello / Streichsextett*" (Capriccio : 10 539)
Petersen Quartett: Conrad Muck, Gernot Süßmuth (vln) Friedemann Weigle, Rainer Johannes Kimstedt* (vla) Hans-Jakob Eschenburg, Michael Sanderling* (vc)
頽廃音楽系の作家では,最もフレンチ・フレンドリーな和声感覚を誇るシュルホフ。品薄感の拭えない彼の室内楽を,ドイツの弦楽四重奏団が録音してくれていました。頽廃音楽系の作曲家の多くがそうであるように,彼もブラームス風のロマンティシズムを鋳型とする書法が基調。より激情的で情念たっぷりのリズムと,前近代にはあり得ない不穏な移調感覚で,元の輪郭を換骨奪胎していきます。どうやら作曲者は1920年代までは真っ直ぐ無調方向へ進んでいた模様。本盤でも,1918年作曲の弦楽四重奏にまだ独ロマン派の輪郭が充分残るのに対し,1924年の弦楽六重奏曲では,無調度が大きく上昇し,暗がりへ向かう世相を良く反映している。不穏さたっぷりの蠢動で,お高貴な教養としてのクラシック音楽を継ぎ接ぎだらけにしていくこうした書法が,彼ら頽廃音楽家の多くに共通しているというのは,どこまで言っても異郷の徒でしかあり得なかった彼らユダヤ人の,ヨーロッパ文明の権化に対するルサンチマンだったからなのかも知れませんですねえ。寡聞にして聴いたことのない四重奏団は,1979年当時ベルリンのアイスラー音大で同級生だった四人が結団。1986年のフローレンス国際で優勝し,翌年はエヴィアン国際でも第二位。さらに翌年はミュンヘン国際でも一位なしの二位となった実力派で,当然の如く演奏は滅法上手いです。特に第一ヴァイオリンは目立ちまくりですねえ。個人的にこの手の曲はちょっと苦手で,つい評価を下げちゃいましたけれど,演奏に関しては文句なしに5つ星クラスではないでしょうか。★★★★
"Suite (Jongen) Rhapodie (Françaix) Concerto (Serly)" (Centaur : CRC 2788)
Paul Freeman (cond) Marcus Thompson (vla) Czech National Symphony Orchestra
すっかり発掘が進んできたジョンゲンは,今や重箱突隅の段階に入ったようで。まさかヴィオラ独奏を肴に,フランセとジョンゲンをカップリングした録音が出るとは。1915年から1919年の大戦期に書かれたジョンゲンの組曲は,『三部作』や『月の光』に通じる重厚なポスト・ロマン派の佳品。ヴィオラの醸し出す悲哀を引き出すべく,背後の管弦楽を周到に抑えてソロを引き立てる。その周到な筆運びはさすがジョンゲン。相変わらず外れを書かない健筆には感嘆の一語。初耳でちょっと期待した併録のハンガリー移民の米国人が無駄に技巧をちりばめ,バルトークを薄めて地味にしたような凡作を書いていたとしても,ゼニをはたいた心は秋晴れの如く澄み渡り,一点の悔いもございません。ソロを取るマーカス・トンプソンはニューヨーク生まれ。ジュリアード音楽院でルイーズ・ベブレンドにヴァイオリン,ウォルター・トランプラーにヴィオラを学んで博士号を取り,現在はボストンに居を構えてニューイングランド音楽院やMITで教鞭を執る人物。ピッチはそこそこ正確ですし,やや力感は弱いながら抑揚もある。ただなあ,いったん重音や跳躍になるとピッチ精度は一気に落ちますし,音色はキコキコ気味で毛羽が目立ち,ちょっと垢抜けないですかねえ。この辺りが,リージョナルクラスとワールドクラスの違いということになるのでしょう。それでも,ブロンクス出の黒人と聞いただけで,彼がここまで来るのにどれだけのドラマを経てきたかは容易に想像可能。こういう人がハンデを負わず,本物の音楽が奏でられる世界になって欲しいですねえ。むろん評価は評価。星勘定は彼の個人票ではなく,魅力的な楽曲とチェコ響の演奏に多くを負っています。★★★★
Vítezslav Novák "String Quartet in D Major / Piano Quintete in A Minor" (Centaur : CRC 2191)
The Kubín Quartet : Jírí Skovajsa (p)
チェコの作曲家では,たぶん最も色合い豊かな曲を書く人の一人ではないかと思われるノヴァークは,管弦楽が最も有名で録音も多いわけですが,恐らくその次に有名なのは本盤に入った『ピアノ五重奏曲』でしょう。1897年に書かれたこの作品は,プラハ音楽院教授となって作曲活動に宛てる時間が激減してしまう前の,ノヴァークの作風を良く表した作品。併録された『弦楽四重奏曲』ともども調性が明示され,形式的には重度にブラームス(独ロマン派)の流れを汲んでいる。特に五重奏曲のほうは和声的にかなり古臭く,のちのドビュッシストぶりを感じ取ることはかなり困難と言わねばなりません。しかし,民謡を聴いて新境地を見出したモラヴィア旅行から戻り,すぐ着手されたとのエピソードをもつだけに,民謡を捻ったと思しき土臭い節回しや「おっ?」と耳の立つ和声がごく遠慮がちに時折顔を覗かせてもいる。それが程なく一気に華開くのを知っている側としては,むしろ冒頭から老婆の子守歌めいたチェロが聴ける併録の弦楽四重奏のほうを,数段面白く聴きました。飾り気なく田舎情緒たっぷりの主旋律を,ポスト・ロマンティックな和声が下支え。保守派の形式の中で,彼のドビュッシズムが静かに胎動を始めたことが良く分かる佳品なのでは。演奏するクビーン四重奏団は1972年にブルノのヤナーチェク音楽アカデミーで,ヤナーチェク四重奏団のアドルフ・シコーラに師事していた四人の同窓生で結団。コチアン四重奏団のアントニン・コフートに師事したのち,コルマーとポーツマスの両音楽祭で入賞。音色そのものは,磨かれたというよりはざらっとしていて土臭いんですけど,ピッチはなかなか正確で,適度に力感もある良演ではないかと思います。★★★★
Ottorino Respighi "Il Tramonto / Antiche danze ed Arie per Liuto 3e Suite / Suite pour Orchestre à Cordes et Orgue en Sol Majeur" (Fondation Tibor Varga : CH 1971)
Tibor Varga (vln, cond) Arlette Chédel (vo) Matti Hirvikangas (vla) Martin Ostertag (vc) Markus Maibach (b) Eva Frick-Galliera (org) Orchestre du Festival Tibor Varga Sion
本盤は,ハンガリーの教育者でありヴァイオリン奏者でもあるティボール・ヴァルガが,半ば自主制作で録りためていた音源をCD化したもののひとつ。レスピーギといえば『ローマ三部作』で,あっし的にもそちらの顔のほうが好みだったりもしますが,それ以外の作品を聴くと,むしろ多いのは懐古的な作りのもの。本盤の三品も,モダニスト・レスピーギではありません。典雅で均整の取れた様式美をもつ『アリア』の存在感がずば抜けているとはいえ,併録曲『組曲』も同趣の疑古典様式。ビバルディの動きにオルガンが加わってバッハ的な趣が添加され,程良く近代化された転調技法と和声が,近代の耳で聴いても宮廷調の擬古典作品として充分に愉しめるだけのモダンな相貌を与えている。こうした作品を聴くにつけ,かつて世界の芸術をリードした故国の芸術を復興ないしは再評価しようと考えていたのは明白で,ここが彼やマリピエロが復古主義と呼ばれるゆえんなのでしょう。これとある意味,好対照を成すのが,独ロマン派の形式と和声感をもつ『夕暮れ』。弦楽三重奏と歌唱だけの質素なこの歌曲,地味ながら控えめに染み入る旋律が好ましく,しみじみとした余韻を残す。もう少し録音が良ければよかったんですがねえ・・。機材や集音環境が良くなかったのか,テープの保存が良くなかったのか,高域が減磁されたうえ定位がウニョウニョ不安定に揺れ,無理矢理後付けしたかのようなエコーもやや気持ち悪い。やや喉垂れ気味ながら歌唱力達者な歌と抑揚の利いた弦部はいずれも好演だけに,ちょっと勿体なかったですねえ。★★★☆



Other Discs

Jan Novák "Dido / Mimus Magicus*" (Audite Schallplatten : audite 97.457)
Rafael Kubelik (cond) Makiko Kurokouchi (sop) Marilyn Schmiege (msp) Clara Nováková* (fl) Dora Novák* (p) Hans Herbert Fiedler (narr) Männerchor und Orchester des Bayerischen Rundfunks
ヴィーチェスラフと間違って買った・・というのは半分嘘で半分ホントな作曲者は,1921年チェコはメヘレン生まれの作曲家。ブルノ音楽院へ進んでヴィレム・ペトゼルカに作曲法,フランティシェック・シェッフェルにピアノを師事したのち,戦争による中断を経てプラハ音楽院へ進み,パヴェル・ボルコベックに作曲法を学びました。奨学金を得てタングルウッドへ留学した際はコープランドの助手になり,さらにはニューヨークでマルティヌーにも師事。共産党支配へと変わったばかりの故国へ意気揚々と帰国しました。しかし,共産主義の元で居心地は決して良くなかった模様。【プラハの春】とソ連の軍事介入の局面を迎えた1968年には出国を余儀なくされ,デンマークへ移住。イタリアを経て,1977年には西ドイツへと移り住みました。ここまで知ったうえで,出国の前年に書かれたこのカンタータを聴けば,独歌劇の大仰さを無調風の不穏な響きと蠢動するリズムで読み替えていくハンス・アイスラーの作風にとても良く似ているのも,決して偶然ではないような気がするから不思議なもんです。演奏はご存じラファエル・クーベリックがバイエルン響を振る豪華さ。日本人と思しきソプラノは,少し声が張りすぎな気はするものの美声で技術も達者。演奏はさすが,大変によろしいです。ゴツゴツとグロテスクな無調のベールをワグナーの上から掛けた書法は個人的には苦手なんですけど,不穏な情念が沸き上がるポスト・ワグネリストがお好きな方はお気に召すんじゃないでしょうか。★★★★
"Sonate pour Violoncelle Seul (Ysaÿe) Sonate pour Violoncelle, op.39 (Jongen)" (Centaur : CRC 2649)
Wesley Baldwin (vc) Christy Lee (p)
しまった〜!独奏もんばっかなのが分かってるのに,チェロ・ソナタなんて言うからピアノ伴奏かと思ってまたイザイの独奏もん買っちゃったよ〜和声ふぇちなのに・・うっき〜!な本盤は,テネシー大学の教員さん二名がなぜか吹き込むベルギー近代のチェロ小品集。チェロのバルドウィンさんは,同大チェロ科准教授の傍らニューワールド・シンフォニーの首席チェリストを兼務。助教授のリー女史はアラバマ大学を出たのちクリーブランド音楽研究院で修士号を獲り,ブルック・スミス栄誉卒業生称号を貰ったんだとか。技術的には決して下手くそではないものの,やはり大都会で世界を視野に活動する大物に比べると,地方レベルを抜けきれないもどかしさの残る演奏か。チェロは抑揚豊かでピッチも悪くないんですが,細部にキコ感が残り,音痩せが拭いきれません。弓を返すときや強音に僅かなピッチの揺れやエグ味が乗ってしまうのも,一流半の哀しさでしょうか。決してヒドイ水準の演奏ではないですし,独奏ソナタのほうはそれなりに聴けるいっぽう,すでにスパノゲとグートの名演があるジョンゲンの場合は,曲解釈でもテンポは下げすぎなうえ無意味に揺らしすぎで,大きく見劣りしてしまう。こちらを目的で買われる方は,はっきり申し上げて勝負になってませんと警告を発しておかねばなりますまい。ピアノを中心に録音も貧相ですねえ。ルイジアナ州立大の奏楽堂で録ったそうですから,機材も現地調達だったのかな?あるいはホールがショボいか,どっちかでしょう。★★★☆
Giuseppe Maria Cambini "Trio I in Re Maggiore / Trio II in Do Maggiore / Trio III in Mi b Maggiore / Trio IV in Sol Maggiore / Trio V in Do Maggiore / Trio VI in Re Maggiore" (Tactus : TC 740302)
Trio Tourte : Nicola Guidetti (fl) Emanuele Benfenati (vln) Loris Dal Bo (vla)
1746年イタリアのリボルノに生まれたカンビーニは,1773年にパリへ移り,フランス革命期のパリで活躍した流行作家。フランス革命の際は,革命側を賛美する曲を量産するなど世知長けたところがあったようで,当時は出す曲みな出版されるほどの人気。中には彼の名前を騙って他人の曲が出版されることすらあったんだとか。しかし,革命後評論活動に軸足を移したとたんたちまち過去の人となり,その後の様子は皆目分からなくなってしまいました。そりゃそうでしょう。これでもかとばかり六曲も入ってるのに,どこを切ってもビバルディ傍系の似たような曲調で,第一番以外はどれがどれか覚えられませんもん。ちょっと優雅にティータイム・・のお供にゃいいんでしょうが,こういうのを延々二時間も三時間も聞かされた昔の貴族は拷問ですな!・・って誰ですか「それはバロック〜前期ロマン派音楽を聴く耳がないからだろ」と抜かしているのは。こんな時代にゃ凡そ生きられそうにないあっしは,たとえ海水温度が何度上昇しようと,親殺し子殺しがどんなに頻発しようと,キラキラ和声の横溢する現代を選びますよ。演奏するトリオ・トゥルテは,フェラーラ音楽院,チジアーナ音楽院を出たのち,現在はフェラーラ市立管の首席フルートを吹くニコラさん,ボローニャ県立管の首席ヴァイオリン奏者を務めるエマニュエルさんと,および同団員のロリスさんの三人で活動するローカルなアンサンブル。擦音の残るフルート,速いパッセージではぼろが出る,音色に金属的なキコ感の残ったヴァイオリンに,ピッチの不安定なヴィオラの組み合わせは,さすがに中央で活躍する方々ほど垢抜けたものではありませんけれど,意外にもローカルな割にはまとまりの良い演奏なのでは。★★★








Recommends


Carl Saunders "Be Bop Big Band" (Sea Breeze : SB-2118)
@compilation Alove dance BEmily CI'm all for you Dperceptive hindsight Enever always Fsome bones of contention Gstrike out the band Hautumn in New York Idearly befuddled Jan apple for Christa Kbaby blues
Carl Saunders, Frank Szabo, Bobby Shew, Ron Stott, Bob Summers, Scott Englebright (tp) Charlie Loper, Andy Martin, Bob McChesney, Pete Brockman, Sam Cernuto (tb) Lanny Morgan, Brian Scanlon, Jerry Pinter, Doug Webb, Bob Efford (sax) Christian Jacob (p) Kevin Axt (b) Santo Savino (ds)
ビル・ホルマンの復帰作『ヴュー・フロム・ザ・サイド』の参加くらいしか意識したことのなかったリーダーは1942年インディアナポリス出身。自らの名前を冠した楽団のラッパ吹きを父に持ち,母はその歌姫。おまけに叔母キャロラインの夫はデイヴ・ペルという音楽的環境。7才でラッパを始めたのちは独学で腕を上げ,母の口利きで1961年にスタン・ケントン楽団へ加入しました。翌1962年から2年だけ父のバンドにいたことがあるものの,その後は芸歴の大半がラスヴェガスのショウ・バンド。私を含め一般に知名度が乏しいのは,既にすっかり衰退した西海岸を主戦場にしていたことが大きいでしょうが,それでもファーガソンやホルマン,ハリー・ジェイムスやトニー・ベネットに請われて客演をやったり,コンテ・カンドリの後任としてスーパーサックスの一員に抜擢されるなど芸歴豊富です。意外にも初リーダー作を発表したのは1996年でしたが,その後は順調に枚数を重ねているようで,本盤は2002年に出た三枚目。標題の通りビッグ・バンド編成で景気の良い西海岸ジャズをやってます。冒頭から思わず「ショーティ・ロジャース楽団ですか?」と言いたくなるほどに,コッテコテの西海岸懐旧派。知らずにいて済みませんと土下座したくなる澄んだハイ・ノートのリーダー以下,演奏陣の技量やたらと闊達。ホルマン時代より格段にソロも歌っている。多彩な編曲陣のペンも見事なこと。西海岸ジャズの黄金期を今様でまた聴きたい方は,きっと溜飲が下がることでしょう。★★★★★
Jeb Patton "A Lovesome Thing" (Jeb Patton)
@love walked in Aworlds apart Ba flower is a lovesome thing Cbegin the beguine Drelaxin' at camarillo EHanna's mood FTF Gthe wise ones Hfantasy in F-sharp minor* Iyemenja
Jeb Patton (p) Vincente Archer (b) Peter Van Nostrand, David Wong* (ds)
リーダーは1974年メリーランド州ケンジントン生まれ。デューク大学へ進んでティボール・ザッツ,ダグラス・バイス,ジェーン・ホーキンスらにピアノを学び,大学院はクイーンズ大学のアーロン・コープランド・スクールへ進学。のちサイドメンを務めるジミー・ヒースや,Eを献呈したローランド・ハナにも学んだことがあるそうで,1997年の修了時にはルイ・アームストロング賞を受賞しました。本盤は2005年に発表された初リーダー作で,自主制作盤。とはいえ,すでにヒース・ブラザーズやクラス・オブ2001名義の録音で堅実なポスト・バップ・スタイルのピアノを披露しており,腕の確かさは折り紙付きです。スタイル的にはバランスの良いモード・ピアノで,似たところを探すなら,もっと溌剌と若く,バップ色も大事にするマルグリュー・ミラーないしザヴィアー・デイヴィス,ないしはもう少しモード色濃く,技巧小粒で黒っぽくなったデヴィッド・ヘイゼルタインのようなタイプですか。大排気量ではないものの看板を張るには充分なテクニックと,小粋なオリジナルの作曲力。左手の和声にモード色を秘めつつも,軽快かつ明快に歌うシングル・トーン主体の右手とのコンビネーションも心地よい。加えてサイドメンがいいですねえ。太鼓はほとんど無名かと思いますが,これがまた乾いた小太鼓類とシャンシャンしたシンバルの軽量級ドラムで演奏をかっちり引き締めており素敵。ベースは実力者で,ゴリッと腰の据わった音を繰り出し頬を緩めて止まない。新人らしからぬバランスの良いトリオ作に仕上がって居るんじゃないでしょうか。良いです。★★★★☆
Johannes Enders Quartet "Sandsee" (Organic : ORGM 9720)
@kind of now Asong for Ben Btaurus Cmother song Ddual force Eunderground dreams Fplease stop me now Gherzog Hsandsee
Johannes Enders (ts, ss) Antonio Faraó (p) Ed Howard (b) Billy Hart (ds)
1967年ミュンヘン出身の彼は,ミュンヘン音楽院を出てグラーツのジャズ研究院へ進学し,ジェリー・バーガンジとデイブ・リーブマンに師事。1989年と1991年にオーストリアの国際コンペで優勝しました。この人のアルバムは,随分前に出た『ホーム・グラウンド』を聴いて以来。ジョーヘンをもう少しゴツゴツにしたような師匠譲りのトレーン奏法と,本家同様,新主流派含みの洒落た佳曲を書く才能を併せ持った人だなとは思ったものの,肝心の脇がいかにも小粒で,やや腰砕けに終わったのが残念でした。本人も思い当たるところがあったのか,2001年発表の本盤では脇を総入れ替え。しかも替わったメンバーがカークランド系の凄腕ファラオにどっしりエド・ハワードと超豪華。ん?なんか余計なのが混じってるぞ?と思いながらも買わされてしまいました。本人はやはり作曲力に絶対の自信があるんでしょう。本盤でもバスター・ウイリアムスのDとハッチャーソンのGを除いて全曲自作。まずこの新主流派的なオリジナルが良く書けている。脇に回って気が楽なのか,ファラオもややお澄まし気味だったリーダー盤とは打ってかわって,好き放題鍵盤を叩きまくり溜飲を下げますし,エドさんの芯の通った低域も二重丸。少し残念なのは,モタモタ王ビリー・ハートがやっぱり少し気になることですが,今回は小太鼓類の音が乾いて録られているせいか,いつもより気になる度も低めです。ちなみに本盤発表後,どういうわけか彼はエンデルス=ルームなるユニットを組んでアンビエント方向へ向かっちゃった模様。いいアルバム作ったのに,今ひとつ話題に上らないのはそのせいでしょうかねえ。★★★★☆
Adam Rogers "Allegory" (Criss Cross : 1242)
@confluence Aphyrigia Bwas Cgenghis Dangle of repose Eorpheus Fred leaves GCleveland Hpurpose Iangle of repose: reprise
Adam Rogers (g) Chris Potter (ts) Edward Simon (p) Scott Colley (b) Clarence Penn (ds)
ニューヨーク生まれの彼は,バリー・ガルブレイス,ジョンスコ,ハワード・コリンズに師事したほか,マンネス音楽大学でフレデリック・ハンドに5年,クラシック・ギターを習いました。デヴィッド・ビニーを中心とする折衷系ジャズ・ユニット【ロスト・トライブス】で一部の注目を集めたのは十余年前。次いで先頃亡くなったマイケル・ブレッカーに寵愛され,認知度を上げたのはご承知の通りです。本盤は2002年に出たソロ第2作で,懇意にしているカルテットにクリス・ポッターのテナーを加えたブルックリン派お得意の編成。出てくる音もある意味予想通りで,カート・ローゼンウィンケルに惚れ込みながらも,もう少しオーソドックスなスタイルへもめくばりした,スペーシーな今様ポリリズミック・ジャズが聴けます。元々5年に渡ってクラシックを学んだ人なので,テクニックは非常に達者で幅もあり,作編曲も含めてフリゼルやメセニー以降のコンテンポラリーなスタイルをバランス良く消化している。ベン・モンデールの翳りとメセニーのフレージングの間を,パット・マルティーノを意識しつつ抜けていくタイプですか。本人もそう認めているとおり,誰の脇に回っても望むようなスタイルに徹するオールラウンダーぶりと,それを可能にする達者な技巧には感嘆しきり。脇も腕利き揃いで悪かろう筈はなく,特にエド・サイモンは出色。あっし的にはかなりウハウハなんですけど,他ならぬ彼のリーダー作としてはこれがやや災い半ばし,核となるキャラの薄さも否めない。贅沢なのは百も承知。彼の狙いはファースト・コールの職人(コンテンポラリー版ピーター・バーンスタイン)だというのもそうでしょう。しかし,聴き手に与える一抹の物足りなさをリーダーとしてどう超えていくのかは,早晩大きな課題となるような気がしてなりませんでした。★★★★☆
Daniel Humair "Triple Hip Trip" (Owl-Universal : 982 459 2)
@a Swiss celebration Atriple hip trip BRome antique Cbram van velde Dcircle waltz Eperimeter's
Daniel Humair (ds) David Friedman (vib) Harvie Swartz (b)
フランス最重量級の太鼓ダニエル・ユメールが1979年の渡米の際に録音した本盤は,滅多に聴く機会のない鉄琴トリオ。一足早く世に出た先輩ゲイリー・バートンを追いかけるように,1970年代以降頭角を表してきたデヴィッド・フリードマンをフィーチャーしています。彼は1944年ニューヨーク生まれ。1989年からベルリン音楽大学の鉄琴と作曲法の両科で教授職にある人物です。この人の名前が知られるようになったのは,1977年にスパイロ・ジャイラの鉄琴奏者デイヴ・サミュエルズと組んだ【ダブル・イメージ】でしょう。本盤と前後してマンハッタン音楽院の先生になった彼は,1982年にジェリ・アレンを迎えた【シェイズ・オブ・チェンジ】でダウンビート誌から年間ベスト20に選定されるなど演奏家としても成功。ジュリアード卒であり,テディ・チャールスやホール・オバートンのお弟子さんとの経歴も頷ける通り,無調寸前の凝った音選びと硬質の音色,そして群を抜く技巧が光る。全体に強面のモード・ジャズといった面持ちで,途中ほぼフリー・ジャズと化す超急速調のCでの猛烈なアルペジオには目が点になりました。それだけにちょっと惜しいのは,やや楽曲が練り込み不足。「セニョール・マウス」を狙ったと思しき@は,本家とかなり落差がありますし,続くAもグルーヴこそ格好良いものの単調。ハービーさんの書いた掉尾の2曲が良く書けており,いっそ彼に全部任せた方が良かったんじゃないかと思ったり思わなかったり。演奏が良いだけにちょっと勿体なかったですねえ。★★★★☆
Brian Dickinson & Jerry Bergonzi "Soul Mission" (Dodicilune : Ed 214)
@soul mission Apardon me Bdelaware daze Cspurge DSam's song Ewith reference Fcrazy makers Gtribute
Brian Dickinson (p) Jerry Bergonzi (ts) Jim Vivian (b) Ted Warren (ds)
1961年オンタリオ州ゲルフ出身のブライアン・ディキンソンといえば,日本でも『ブライアン・ディキンソン・トリオ』と『ライヴ・アット・ザ・セナター』で少しは有名になった御仁。トロントへ進出したのが1979年と芸歴が豊富な割には,リーダー作は5枚ほどしかない寡作家。でありながら,カナダ界隈でCDを探しているとちょこちょこ名前が出てくる脇役重宝型で,本人も2度のジュノー賞を受賞。トロント大学で教育者を兼務する知性派の側面も頷ける,エヴァンスを消化した端正なピアノはなかなかのものです。最近どうしてるのかと思っていたところに出会ったのが本盤。2002年に地元トロントにて録音されたカルテット録音で,なぜかテナーにジェリー・バーガンジが参加してます。意外な組み合わせのような気もしますが,レギュラー・カルテットなんだとか。で,太鼓に音の柔らかいヴィヴィアンさんとやや粗めのテッド・ウォレンが入る。これですぐ『ETC+1』を想起した貴兄は鋭い。ジョーヘンばりのやざくれトーンを,言われてみれば確かに似ているフレッド・ハーシュ的リリシズムで端正に下支え。新主流派とエヴァンスの緩衝帯へ,巧みに舵を取っています。この二人,音作りの面でも相性良好。作編曲に波があり,時々すんげえ詰まんない曲を書くバーガンジを,1993年にはジャズ・レポート・アワード作曲賞も受賞したディッキンソンが下支え。ここでも,フレッド・ハーシュ効果を挙げます。良い意味で駆逐艦クラスの4隻が良く協調し,敵戦艦をきっちり撃沈する。手堅い仕事の快作。ETCのRED盤がお好きな方は迷わず買って宜しいのではないでしょうか。★★★★☆
Jean Beaudet Trio "En Concert" (Unidisc Music : DSM3021)
@crossroads Ale pardon Bspring can really hang you up the most Cles enfants c'set l'avenir Dqui se ressemblent.. Esans paroles Faccélérations
Jean Beaudet (p) Daniel Lessard (b) Michel Ratté (ds)
『室内の音楽』なるトリオ作をご紹介したのはもう何年前になりますか。辛うじて記憶の片隅に留まっていたカナダの先鋭ピアニスト,ジャン・ボーデさん。1950年オタワに生まれ,王立トロント音楽院でピアノを学んだのち,1970年にオタワ大学へ進んでフレデリック・カラム,エルドン・ラトビューンに対位法,作曲法,ピアノを師事。その後1975年に自分のトリオを持ち,1979年にはモントリオールへ進出。1980年代以降はコンスタントにリーダー盤を発表している中堅です。くだんの録音を聴いたときは,ポール・ブレイの切れ味を持ったエヴァンシストぶりに趣こそ感じたものの,リズム感の面で難を感じ,今ひとつ印象に残りませんでした。本盤はこれに続き1998年に発表されたトリオ作で,モントリオールのボン=パストゥール聖堂でのライブ録音です。目の前に聴衆を見ながらの演奏で,少し控えたのでしょうか。核となるポール・ブレイ要素は残しながらも,エヴァンス色を強めたリリカルな演奏となり,意外にも耳当たりは穏やか。なにぶんテクニシャンではありませんから,急速調のサンバ乗り@などではリズム感の甘さが見え隠れしてしまいますし,ベースのルザールも弦高低くペロ感の抜けないゴメシスト。演奏は小粒で線の細さは否めません。しかし,ブレイの薬味を利かせたオリジナルは良く書けており,奇を衒わず硬派なモード・ピアノに徹したのも奏功。ぴりぴりとした緊張感こそやや薄れたものの,アルバムのまとまりは前作よりも格段に良いと思います。マイナー盤漁りの好事家にはお薦め。その後あまり活躍が聞こえてきませんが,どうしてるんでしょうかねえ。★★★★☆
Gordon Beck "The French Connection I & II" (JMS : 18648-2)
@the beige bird beckons Amademoiselle S.L. Bmetro-mania Cthe french connection pt.1-3 Dgoing up Eaction city Fthe river Gsans melodie too Hphilologie Ilady V Jfrench connection II Kearly morning
Gordon Beck (piano, rhodes)
フリー含みのエヴァンス奏法が鮮烈な『ジャイロスコープ』で印象に残る彼は1935年ロンドン生まれ。ピアノは独学でしたが,のち4年間クラシック・ピアノを勉強した経験があり,闊達な技巧はその辺りに由来するものです。その後カナダに渡り,24までは航空技師の仕事をしたものの,プロのミュージシャンになる夢を捨てきれず1960年代始めには帰英。ヴィック・アッシュ〜ハリー・クレイン五重奏団を経て1962年にタビー・ヘイズ四重奏団に参加。実質デビュー録音だった『レイト・スポット・アット・スコッツ』で一躍勇名を馳せることになったのはご承知の通りです。その後はトニー・キンゼイ,アーニー・ロスのサイドメンを経て自己のトリオを結成。1967年には『ドリトル先生はジャズが好き』でリーダーとしても独立を果たします。さらに1969年にはフィル・ウッズのヨーロピアン・リズム・マシーンへ参画。1979年にはアラン・ホールズワースと組むなど芸幅が広く,モードもフリーもこなす芸幅の広さと確かな技巧を併せ持つ腕利きとして,1970年代の英国シーンを駆け抜けていきました。本盤は1978年と1982年に,標題の通りフランスで録音された2枚の独奏盤をカップリングしたもの。とはいえ,随所にフェンダー・ローズやピアノの多重録音が処方され,大人しくスタンダードを弾いて済ませる類のアルバムではありません。多彩なリズムを散りばめたクロスオーヴァー趣味の自作曲に1970年代の臭みをつめ込みながら,明晰な技巧を駆使して縦横無尽。ルパン的モーダル情緒満載で実にクールです。★★★★☆
Freddie Hubbard "Sweet Return" (Atlantic : 7 80108-2)
@sweet return Amisty Bwhistling away the dark Ccalypso Fred DHeidi-B Ethe night has a thousand eyes
Freddie Hubbard (tp, flh) Lew Tabackin (ts) Joanne Brackeen (p) Eddie Gomez (b) Roy Haynes (ds)
1970年代には他の大御所同様スムース・ジャズやフュージョン,ファンクへと接近したハバードさん。チック・コリアやハービーは許されたのに,彼だけはムード歌謡に転びすぎたせいか,すっかり評判を下げてしまって。実際は,『イン・コンサート』や『VSOP』など,ちょこちょことはアコースティック路線の録音も継続。決して魂を売ったわけじゃなかったんですがねえ。1980年代に入ると,彼は思い直したかのようにアコースティックなジャズ演奏へと戻ってきます。1985年に録音された本盤は,ベテランのリズム隊に女マッコイとして評価を高めていたジョアン・ブラッキーンを迎えて制作されたオーソドックスなポスト・バップ作。バラードからアフロ・キューバンまで,多彩なリズムの楽曲を演ってます。何と申しますか,後ろのアンサンブルがかなりアンバランスなんですよ。ペンタ色濃く,ハル・ギャルパーみたくペラペラしたモード奏法のピアノに,うにょペラなエディ・ゴメス,そこにロイ・ヘインズのバッつんカッつんしたドラム。三社一体となって繰り出される伴奏の浮くこと。加えてテナーが骨っぽいタバキンですから・・。加えて楽曲もやや手抜き感が拭えない。もう少し練り込めたんじゃないかという気がしないでもありません。そんな本盤の救いになったのは即興。ハバードは好調だったようで,ドスの効いたDのソロや,爽快に吹き抜けるEは本盤のクライマックスをなす好演。かつてに比べ少し音も重くはなったものの,突き抜けるようなハイ・ノートはいかにもハバード。即興だけとれば,1980年代以降の録音で初めて感心しました。中古盤屋でたまに落ちてますから,安く見かけた際は拾ってあげるのも一興です。★★★★
Massimo Urbani "Go Max Go" (Philology : W 187.2)
@tenor madness Ablue bossa Bwhat's new Csolar Dmy little suede shoes Eehythm-a-ning Fthere's no greater love
Massimo Urbani (as) Riccardo Zegna (p) Luciano Milanese (b) Gianni Cazzola (ds)
ロザリオ・ジウリアーニも心酔して止まないイタリアのパーカー狂マッシモ・ウルバーニは,麻薬渦で早世した割に結構芸歴は長く,古くは1970年代前半からプライベートながら録音を蓄積。リミニ近郊のサン・ジュリアーノ・ア・メレでのライブの模様を収めた本盤は,1981年と中期のものにあたります。以前耳にした『アウト・オブ・ノーウェア』が1991年の作品でしたので,本盤はそれから約十年前の作。若さを得て少しは違った演奏をやっているのではと思いつつ買いましたが・・この人のアルトは変わりませんねえ。パーカーやフィル・ウッズ,ソニー・クリスそっくりの扇情的な音色とバピッシュなフレージングが核。そこにドルフィもびっくりのフリーキーなフラジオとスケールアウトを織り交ぜつつ,豪放に吹き倒すのが身上です。多少ラリっているのか,ライブだからなのか,録音も含めて仕上げは荒削りですし,手数が多くドライブ感もある反面,手癖もかなり多め。B級臭プンプンのアルトです。しかし,命を削っているかの如く圧倒的なドライブ感と音圧,音数の多さで直球勝負。そうした彼の直球勝負ぶりを「おお小細工なしでかっちょエエっ」と聴くか,「何かひたすら雄叫んどるだけで懐の浅い吹き手やなあ」と取るかで,評価はだいぶ変わるんじゃないでしょうか。確かに一本調子ではありますけど,それとエネルギッシュに猪突猛進する彼の吹け上がりはコインの裏表。モードの薬味を添えつつも,コロコロと軽快に弾くピアノ以下,後ろの面々もシュアな伴奏で,彼のアルバムとしてはお薦め度の高いものになっているのではないでしょうか。★★★★
Richard Whiteman Trio "All or Nothing at All" (Cornerstone : CRST CD 127)
@oh, lady be good Akoalogy Ball or nothing at all Csoultrane Dsandown place Eall about the Hank Ftoo close to comfort Gbloor west village Hmoon song Iin the still of the night
Richard Whiteman (p) Brandi Disterheft (b) Sly Juhas (ds)
主役のリチャード・ホワイトマンは,現在ハンバー大学で教鞭を執りながら,トロントで地味に活動中のバップ・ピアニスト。アリ・ヘンダーソン五重奏団の一員です。トロント大学を出たのち,ドン・トンプソンやマーカス・ベルグレイヴ,ケン・ペブロフスキのサイドメンをやった経験もあるとか。しかし本盤が出るまで,1996年の第二作『グルーヴヤード』以外の彼を知っていた人はまず居ないでしょう(笑)。器用な人ではなく,十年近くを経ても,そのスタイルには全く変化無し。最大の魅力である右手のシングル・ノートは,今回も異様なほど歌心に富み,これだけでおかわり三杯はいけそうなほど素晴らしい。もし貴殿が「ジャズは即興が命」と仰るのなら,これほどおあつらえ向きのアルバムもそうないんじゃないでしょうか。「じゃあ,何でこんなに低い評価なんですか?」と仰る貴殿は鋭い。裏を返せば彼の魅力,そのメロディアスな単旋律以外にはほとんど皆無に等しいのもまた事実でして。特にリズム感の悪さははっきり言って異常。モタモタ前にのめったり後ろへ卒倒しかかったり,かと思えば音符が消えたりと悪い意味で大忙し。ローカルなジャズメンも腕のあがった連中が増えてきた昨今,これに提灯記事を書いて売ろうとする某社ははっきり申し上げて詐欺だろとしか思えません。急速調の@では完全に馬脚を現すリズム隊も,力量はたかが知れている。これで主役の虚心坦懐然とした歌心がなかったら,躊躇なく鼻で笑って無星にするであろう作品。色々な意味で,悔しいですねえ・・何だか。★★★★
Johnny Hates Jazz "Turn Back the Clock" (Virgin : VJD-32009)
@shattered dreams Aheart of gold Bturn back the clock Cdon't say it's love Dwhat other reason EI don't want to be a hero Flisten Gdifferent seasons Hdon't let it end this way Ifoolish heart, 3 other remix tracks
Clark Datchler (vo, p) Calvin Hayes (key) Mike Nocito (b) with Frank Ricotti (perc) J.J. Bell, Neil Hubbard (g) Molly Duncan, Martin Drover, Neil Sidewell (horns) Peter Vitessi (key) Steve Lange, Miriam Stockley, Kim Wilde (vo)
某OFFでは9割の確率でジャズ・コーナーに配架され,置き方ひとつで店側の売り物への愛情も知れてしまう本盤は,1988年に発表された英国ポップ・グループのデビュー作。旧知の友人三名で組んだバンドは,1987年に@で全英5位,全米2位を記録して一躍脚光を浴び,続く第二弾シングルのEも全英11位,全米33位。サードシングルのBは全英12位と好成績を収めます。本盤は翌年1月に発表され,第4弾シングルAのヒット(全英20位)がおまけに付いて大成功しました。音的には,当時流行ったブルーアイド・ソウルの流れを酌むお洒落ポップスですが,司令塔ダチェラー君のお父さんは1950年代に人気のあったジャズコンボ【スターゲイザーズ】のサックス奏者。そのためか,曲作りや歌の達者さは数多のライバルとは段違い。捨て曲なしと言って良いほど堅牢な出来と思います。ただ,その才能が災い半ばしてしまったのも皮肉。人気定着のため最も大事な二枚目への準備期間に,司令塔が方向性の違いからあっさり離脱。主を失った残る二名はFを書いたフィル・トナリーを新たに押し立ててバンドを継続し,1991年に第二作『トール・ストーリーズ』を発表しますが,器の差は歴然。古いファンにも新しいファンにも総すかんを食って消滅しました。こんな事情を知ってか知らずか,今日も某OFFでは,250円と一発屋扱い。・・勿体ない。少し綺麗すぎ引っかかりに乏しいとはいえ,青い目の商用ポップスとしては,最上級の出来なのでは。ちなみに風変わりなバンド名の由来は,ベースを担当するマイク・ノシートの友人。ジャズ大好きの奥さんに毎日家でジャズを掛けられ,ジャズが嫌いな彼はノイローゼになっちゃったんだそうで。趣味の合わん相手と結婚すると人生の何割かは損しますな。くわばらくわばら。★★★★
Finn Savery "Collection" (Music Mecca : CD 5002-2)
@trekanten Ablues Nr.3 i F Byesterdays Cindian summer Dveil for midnight Ekontraster Fjens vejmand Gnight and day Hbut not for me Isweet georgia brown Jwouldn't you Kanother distance Lbrand new Mcapriccio for bass N3 dances Nr.3
Finn Savery (p) Ole Molin (g) Erik Moseholm, Niels-Henning Ørsted Pedersen (b) Jørn Elniff, Alex Riel, Makaya Nshoko (ds)
コンピもので,おまけに誰かも知らん演奏家。普通ならまず手を出さない本盤をつい買いたくなったのは,当然かのニールス・ペデルセンが参加しているからでしたが,買ってびっくり玉手箱。リーダーはデンマークのサード・ストリーム界を牽引した第一世代の中心人物でした。彼は1933年ゲントフテ生まれ。父に就いて学んだのち,1953年にデンマーク音楽院へ進み,1960年まで作曲法とピアノを学んだ,当時としては珍しい知性派です。彼とおおよそ時を同じくしてスウェーデンに出てくるヤン・ヨハンソンがそうであったように,彼も彼岸の知性派ピアノ弾き(ジョン・ルイスやレニー・トリスターノ)を踏まえつつ,彼らとはひと味異なる硬いリズム感,粒立ち良く整然としたクールなピアノ・タッチ,民謡や近現代音楽の薬味を微かに添えた理知的な作編曲をバランスさせてヨーロッパの出自をアピールします。少なからず編曲過多に陥っているきらいもありますし,ドビュッシーの国フランスのそれと比べ彼らの実験趣味はいかにも小市民的で,ずっと目立ちません。けれど,控えめで慎み深いぶん,本家よりずっと楽閥的バイアスが少なく,音楽としてはバランスの取れた聴きやすいものになっている。少し遅ればせながらであれ,自らの足下をきちんと見つめる連中が彼岸にもいたのだ・・と知れただけで,買った甲斐はありました。安くお見かけしたら,ぜひどうぞ。★★★★
Don Braden "Organic" (Epicure : BK 66873)
@moonglow Asaving all my love for you Bwalkin' the dog Cbrighter days Dcousin Esau Etwister Fbelief Git might as well be spring Horganic Iplain ol' blues
Don Braden, David Newman (ts) Jack McDuff, Larry Goldings (org) Cecil Brooks III, Winard Harper (ds) Tom Harrell (tp, flh) Russel Malone (g) Leon Parker (perc)
「この人,絶対モテないだろうな・・」と思いつつも,その人となりについシンパシーを覚えてしまう。ジャズメンも人間。作り出す音楽につい頬を緩めてしまうような人物もやっぱりいます。あっしの場合,その最右翼はドン・ブレイデンさんでして。ハーバード大学工学部出のインテリさんでもある彼は,在学中からジェリー・バーガンジやビル・ピアースに師事し,卒業の三年後ニューヨークへ進出。ハーパー・ブラザーズを経て,新人育成の上手いベティ・カーターのバンドに加入して研鑽を積みます。その後もディジー・ギレスピー楽団やカーネギー・ホール楽団などを渡り歩いた彼は,我が強いというよりはユニットを上手に引き立てて貢献するタイプ。現代版ジミー・ヒースと呼ぶのも,そうしたキャラのゆえです。ロック界でいつもヴォーカルばっかキャーキャー言われるのと同様,我の強い連中ばかりが目立つジャズ界でこういう人は一番割を食ってしまう。中古盤店での,彼のリーダー作の扱いの酷さには憐憫の涙を禁じ得ません。500円(の三割引)で売られてた本盤もその良い例。彼自身,作編曲には絶対の自信があるいっぽう,今ひとつ課長補佐的な律儀さと大人しさが音に乗ってしまう演奏には歯痒い思いをしているのでしょう。なんとここでは,コッテコテのオルガン・コンボ編成で,ファンキー・ジャズをやっている。編成が変わろうとそのアレンジ力は不変で「外れを作らないなあ・・」と感心しきり。しかし,ソウルフルで恰幅良くなりたい!と彼が望めば望むほど,理想と現実のギャップに聴き手の居住まいの悪さも増幅されてしまうのは,皮肉というか何というか。「素敵な課長さんなのに・・」ときおり一部の奇特な女子社員の視線を浴びつつも,彼はまた今日も窓際の椅子へ座るのです。アレルヤ。★★★★
Genesis "We Can't Dance" (Virgin : VJCP-25066)
@no son of mine AJesus he knows me Bdriving the last spike CI can't dance Dnever a time Edreaming while you sleep Ftell me why Gliving forever Hhold on my heart Iway of the world Jsince I lost you Kfading lights
Tony Banks (key) Phil Collins (vo, ds, perc) Mike Rutherford (g, b)
中古屋に行くたび,数枚が並んでは「買えよおっさん」と囁いて困る本盤は,「いんビデボーたッちェ」で1980年代に一世を風靡したジェネシスの1991年作。マイク・ラザフォードがこの後,ザ・メカニックスの新譜で才能の枯渇をさらけ出し,フィルもまた『バッド・シリアスリー』で燃え尽きたのを知っている側としては,「どうせ薄味の堕曲オンパレードだろ」と大した期待もしていなかったのですが,意外や意外,まさに落日寸前の最後の輝きが刻印されておりまして。音的には,フィル同時期のソロ作『・・シリアスリー』に,消費税程度のプログレ色を上乗せしてシリアスにした感じ。フィルのポップな曲書きとしての才能がまだ輝きを失わず,ラザフォードとバンクスのプログレ方向からの睨みが適度にスパイスとなって,危うく均衡。最良の効果を挙げている。成る程,売れたのも道理と変に納得しました。中ほどを中心に捨て曲がところどころ混ぜ込まれ,隔靴掻痒を演出。12曲も要らんから,そのぶん煮詰めてくれとの感慨は拭えませんしし,これはフィルの作品全般に言えることなんでしょうがベースがスカスカで,ラインが単調。もう少し工夫できんのかちゅう気も。しかし,250円でこれだけの内容のものが聴ければ充分過ぎるほど御の字。仄聞するところでは,かの『インビジブル・タッチ』に次ぐ1000万枚もの売り上げを残したそうですし,あっし如きに何を言われようとも,十余年で250円に値付けされようとも,痛くも痒くもないでしょう。本盤を最後にフィルおじさんはバンドを離脱。ジェネシスは無名のレイ・ウィルソンを看板に数年後新作を出すも,たちまち失速して消滅しました(昨年復活)。★★★☆



Other Discs

Marc Moulin "Sam Suffy" (Counterpoint : CRC 003)
@le saule Amisterioso Bfrom Cla blouse Dla bougie Ele beau galop Ftohubohu: part I Gtohubohu: part II Htohubohu: part III Itohubohu: part IV Jtohubohu: part V
Marc Moulin (key, p, moog) Garcia Morales, Bruno Castellucci (ds, perc) Richard Rousselet (flh, tp) Philip Catherine (g) Jasper Van't Hof (ep, org)

リーダーは1942年ブリュッセル生まれ。多分今では,アンナ・ドミノやヴィクター・ラズロらに曲を卸してた人としてくらいしか認知されていず,器用貧乏がゆえの皮肉を感じてしまいますが,もともとは1963年からアレックス・スコリエ五重奏団で腕を磨き,渡欧組のデクスター・ゴードンらの伴奏も担当していた腕利きさんでした。1974年に出た本盤は,彼のソロ名義での初リーダー作。当時の彼は,スライ&ザ・ファミリー・ストーンや電化マイルスを聴いて彼岸のファンク・ブームの波をモロに被った時期でした。ここでもその影響はモロに反映され,ひとくちに言えば低体温で褪めきった欧州版ヘッド・ハンターズをやってます。時折コンガの混ざる簡素なリズムと,ムーグやエレピのエグみのある和音やリフが延々と続き,エレピ(ピアノ)の淡泊なソロと,電化マイルス気取りのぶきっちょなラッパがソロを添える趣向。核の部分では,彼岸の黒人ファンクの影響をモロに被っておりましょう。リーダーは,技巧的にも蠢動感の点でも彼岸の連中とは比較にならず,そういう目で見ると実に詰まらない作品なんですが,リズムと通奏リフ以外を敢えてすかすかにした隙間たっぷりの音場で,独自の趣を形作っている。そこに抜け目なく調合されたカンタベリー系のプログレやECMの色を聴きとれる方には,それなりの面白みが出てくるかも知れません。特に掉尾のFはリズムマシーン風のシンプルなリズムとリバーブたっぷりのフリューゲル,隙間たっぷりのエレピの和音で簡素に構成される音場が,アンビエント・テクノを先取りした感じでいいですねえ。そう聞いて触手が動く方はお試しになるのも好いかも知れません。★★★
Philip Bailey "Life and Love" (Avex : AVCT-10000)
@how can I rely on you Aanything is possible Btonight Cweightless Dsomeway,somehow Edown Ftalking to myself Gcaution to the wind Hsteppin' through time Ilife& love Jfeining for your love Kall night waiting LBailes'song Mhow can I rely on you Nshower me with your love
Philip Bailey (vo) Andrew Klippel, Graham Harvey (key) Kevin Chokan, Vernon Beck (g) Myron Dove, Randy Hope-Tailor (b) Gerg Gonaway, Richard Bailey, Simon Cotsworth (ds) Rafael Padilla (perc) et al.

セルフタイトルの前作を聴いて「いつの間にこうも墜ちてしまったのだ・・」と哀しくなり,それっきりになったフィリップ・ベイリー。落ち目の人間に殊の外冷たい彼岸では相手にされず,最近は日本でディスコ時代のファンを相手に糊口を凌いでいるようで。実績積んでも屁のつっぱりにもならない。辛いですねえ・・こういう商売。1997年発表の本盤は,とうとう悪名高いAvexからのリリースになっちゃったようです。むろん,音作りは旧友のクリッペルらが担当し,1970年代のフィーリングを当世風クラブ・ビートに乗せてまずまず周到。捨て曲を入れるくらいなら削って,もう少し練り込んだ方が良いとも思いますけど,意匠の出来そのものは良好な部類に入ると思います。しかしですねえ・・哀しいことに主役のヴォーカル,さらに経年劣化が進んでる。アルバムのハイライトであろうインコ参加のHでは,中ほどにもの凄いファルセットを仕込んで声域健在を誇示するんですけど,声の衰えって声域の広い狭いと関係ないですからねえ・・。張りがないとか,喉がヨレるとか,声量が落ちたとか,声質がしゃがれたとか・・。そういう次元の話なんですよねえ・・。なまじ彼に憧れて大きくなったインコの提供曲が要を得たカッチョよさだけに,伴奏へ沈み込んでしまう主役の声の衰えが,ひたすら無常観を誘ってしまいますことよ。★★☆
Art Davis "A Time Remembered" (Jazz Planet : JPCD-4001)
@evidence Aa flower is a lovesome thing Bdriftin' Ceverybody's doing it Deverytime we say goodbye EArt's boogie Fa time remembered
Art Davis (b) Ravi Coltrane (ts, ss) Herbie Hancock (p) Marvin Smitty Smith (ds)
コルトレーンの『アセンション』を始め,マックス・ローチの五重奏団やブッカー・リトル,フレディ・ハバードらの録音で芳醇な低音を提供していたアート・デイヴィスさん。残念ながら2007年7月29日に心臓発作でお亡くなりになりました。ジャズ・ベーシストの傍ら,ニューヨーク・フィルやロサンゼルス・フィルなどでもコントラバス奏者を務め,1982年にはニューヨーク大学で臨床心理学の博士号を取得。1986年以降は臨床心理士としても活躍するなど知性派で,1970年代には人種差別問題に反抗して業界から干されかかったなんてこともあったんだそうです。本盤は1995年に出たもので,ご覧の通りやたら屈強なゲストを迎えたカルテット録音。珍しいだけでは早晩飽きられてしまう芸の世界の無情を,その身でまざまざと見せつけてくれたラヴィ・コルトレーンがフロントを飾るのは,リーダーの温情か製作陣のあざとさか。そのいずれであれ聴き手にとってはさしたる問題でもなく,興味の大半はピアノに座ったハービー御大が,ロール大好きッ子スミッティのゴツい煽りを食ってどれだけ壊れてくれるかの一点に集中。同じ期待をして本盤を狙ってる皆さん。残念でした。さすがの二人も,これだけの重鎮を前にしては大人しく伴奏するしか無かった模様。拍子抜けするほど整然かつ淡々と,オーソドックスな演奏に終始。ブギウギ乗りのDにファンキーなジャズ・ロックのBと,4拍乗り控えめでリズムかっちりにしたせいもあるんでしょう。楽曲もフツーだしなあ・・。これはこれで悪くはないんでしょうが,ハービーの壊れっぷりを愉しみにしていた人はちょっと拍子抜けなのでは。フロントの彼も正直なところ昼行灯。一時日本盤でちやほやされたっきり消えたのも納得ですか。歯切れ悪く,取り立てて上手いとも巧いとも思いませんです。★★★☆






脱稿:2007年10月10日

編集後記

秋ですねえ。
昨晩わたくし,とうとう毛布を一枚出しました。
皆さん,風邪など召されておりませんか。

夕暮れどき
家路を急ぐ若人たちの,群れ騒ぐ声を遠くに聞きながら
ふと物思いに耽ることが多くなりました。

預かった,
一応は健やかな頭と身体,それにみ合うだけの何を,
お前は現世に生み落とし,刻みつけてきたのかと。







体育の日は,10月10日じゃなかったのか!
東京オリンピックの日を記念するからこその祝日じゃないのか!

職場の建屋に入ったら,
見事にららら無人君

そんな制度に同意した覚えはねえ!
紛らわしい制度作りやがって!うっき〜!
空っぽのフロアで,
ひとしきり込み上げる虚しさを絶叫へと変えてみた。
「ヒッキー化して世の中の動きを全く把握してないお前が悪い」
おっしゃるとおりですすみませんデシタ・・
仕事場が隔離病棟に思えてきた15+αの朝。





前にこの編集後記で
話題にした,パソナの派遣の話

行くヤツいんの?なんて言ってた,私が甘かった・・
こんな条件でも行く人は居るようです・・。
その1その2その3】。
・・シャレかと思ったら,ほんとに家賃折半してんのかよ!
パ●ナは鬼だな・・
どこまでも生々しい,これが格差社会。





久々に目が点になったこの新譜
すげえ,ってゆうか舐めてんのかお前
「歌わされるミニもなれ!」
・・サムい駄洒落も決まったところで
老兵,木枯らしとともに去りぬ。



それではまた次号,
しぃゆうあげぃん。

ぷ〜れん敬白 

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